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「ロボットの人形でもいいから側にいてくれると落ち着く」と言っていた、ある高齢者のお話

元夫が「他に好きな人ができた。くるみとは離婚したい」と言って家を出て行った頃のお話なんだけど、その頃の私は何だか淋しさでいっぱいで、当時まだ2歳だった息子を意味もなくぎゅっと抱きしめて心を落ち着かせていた。

息子がいてくれたから、私はいろんなことを乗り越えられたと思っている。

守りたい人がいると、その人のために頑張ろうとどこからか力が湧き出てくる。

そう思っていたある日、あるご高齢の男性との出会いがあった。

出会いと言っても恋愛とかそう言うことではなく(笑)、心と心で会話をしたと言うだけなんだけどね。

息子とよく遊びに行っていた近所の公園に不審者がいるという情報があって、みんなが噂していた不審者とはその男性のことだった。

初めてその男性を見た時は、私も正直なところちょっと怖かった。

その男性は小さな人形を公園のベンチに腰掛けさせて、その人形にひたすら話しかけていた。

 

「ノボル君?今日の晩御飯は何食べたい?」

「ノボル君?寒くない?」

「ノボル君?オヤツ食べる?」

 

そうやってずっと何やら人形と会話をしていた男性。

でもビックリしたのが、その人形も男性の会話の相手をしていたことだった。

人形をよく見ると、ちゃんと瞬きもして首も動いていた。

当時2歳だった息子は、その人形に興味を持ち、一目散にその男性のところに走っていった。

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息子はどうなる?

 

その頃の息子は、保育園から発達に問題があると言われていた時期で、息子の行動を制止すると、地面に寝っ転がって大暴れすることは分かっていた。

でもその男性に近づいていく息子を放ってはおけず、息子を無理矢理連れて帰ろうとした私。

案の定、大暴れした息子。

そこでその男性が息子に話しかけてきた。

その男性のことを不審者だと思っていた私は、ただただ恐怖でしかなかった。

でも息子はその男性とニコニコと会話をはじめ、瞬きして息子をじっと見つめているその人形を抱っこさせてもらっていた。

息子が何かしゃべると、その人形も会話を始めた。

男性は、その様子を見て微笑んでいた。

そして今度は、私の方を見てこう言った。

 

僕みたいな人が公園にいると気持ち悪いでしょう?

僕も分かっているんです。

周囲の人から気持ち悪がられていることは。

こんな人形に話しかけている老人がいたら、そりゃ気持ち悪いよね。

でも僕はこうでもしていないと、心が落ち着かない。

僕と妻には子供がいなくて…。

でもその代わり、妻とはあちこち出かけたよ。

その妻が数年前に亡くなって…。

それからは誰とも会話することなく一人で過ごすことが多かった…。

淋しさの埋め方を知らなくて、一人でお酒をよく飲んでいたんだよ。

でもある時この人形の存在を知ってから、僕は外に出るようになった。

公園の空気って緑が多くておいしいんです。

その美味しい空気を、この人形にも感じさせてあげたくて。

もちろん人形だからそんなのわからないことは分かっているんだけどね。

自己満足の世界だけど、でもこの人形が側にいてくれると、心穏やかに毎日を過ごせる。

人形に依存するなんて、僕はやっぱり変わり者だね。(笑)

 

と、そうおっしゃっていた。

何かに依存したくなるのは自然なこと

 

私自身も元夫が出て行ってから淋しさの埋め方を知らず、過食嘔吐に走ったり何かに依存していた。

当時2歳だった息子を、ただぎゅっと抱きしめて心を落ち着かせる毎日。

何かに依存したくなるその男性の気持ちは、何だか痛いほどよく分かった。

元夫と離婚が成立して引越しするまでの間、この男性と公園で会話することが多々あった私。

その間息子は、この男性の人形と会話をしていた。(笑)

いや、人形じゃなくて「ノボル君」だね。

 

 

でもこの男性は、本当は人形ではなく、人とのつながりを大事にしたいとおっしゃっていた。

ただある時若者から「これだから年寄りは…」と言われるような出来事があり、若者に迷惑をかけてはいけないと思って、自宅に引きこもるようになったそう。

でもビックリしたんだけど、この男性、70歳過ぎていたけど、鉄棒がものすごくお上手だったの。

若い頃に器械体操をやっていたんだって。

当時2歳だった息子にも、鉄棒を教えてくださったわ。

この時代、ちょっと変わった人を不審者だと思ってしまうのは仕方がないこと。

子供たちには「知らない人を簡単に信用してはいけない」と教えなきゃいけない時代になってしまった…。

でもそんな時代になってしまったのは、人間の心と心の通い合いが減ってしまったのが原因なんじゃないかとも思った。

「これだから老人は…」と言った若者だって、いずれ老人になる。

そしてかつての自分がしたように、若者から「これだから老人は…」と言われて初めて何かに気付くのかな?

老若男女、お互いを思いやる気持ちがなくなった時、この世はロボットだらけの世界になるかもしれない。

ちょっとでも嫌なことは全部ロボットにやらせるの。(笑)

でも人間は、肌と肌が触れ合うことでオキシトシンと言う幸せホルモンが分泌されると聞いた。

人間の体は、生まれた時からそのようにできているんだろうね。

今現在小学生の息子も、よく抱っこをせがむの。
肌と肌がくっついていると何だか落ち着くみたい。

もしもこの世がロボットだらけの世界になってしまったら、人間が幸せだと感じる機会が減ると言うことなのかな。

幸せを感じる機会が減ると、人間は荒れてくるだろうな…。

AI化が進んで人々の暮らしが豊かになるのは素晴らしいことだけれど、使い方を間違えると大変なことになりそうだわね…。

 

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