タイトル下(広告)

睡眠不足の恐怖(後編)

ただ海が見たくてここに来た私。気付いたら、誰かにちょこっと背中を押されたら、確実に海に落ちるところに立っていた。飛び降りたくて仕方がなかった。

岸壁に立っているコブタ

でも「死んでやろう」と思ってここに来たわけではないので、携帯に電話がきたら普通に出る。

岸壁に立っているコブタの携帯が鳴る

夫からだった。

「今どこにいるの?」と聞かれたので場所を言うと、何を思ったのか慌てた様子で「俺のネクタイと黒い靴下知らない?」とか、「冷蔵庫のプリン食っていい?」などと聞いてきた。

夫からの電話に出るコブタ

「とりあえず今すぐ帰ってきて!」と言うので、すぐに帰宅したコブタの私。電話でしゃべっている夫の声が優しくて、「もう、夫ったら、私がいないと何もできないんだから~」と、しっぽをブンブン振ってとりあえず帰った。

夫は私が自殺するんじゃないかと勘違いして「帰ってきて」と言っただけなのに、この時の私は、夫が離婚を考え直してくれたんじゃないかと期待でいっぱいだった。おみやげに、夫が好きなスイーツを買って海をあとにした。

帰宅してから気付いたんだけど、夫は調停前のプチ別居の際に全ての道具を新居に運んだので、私と息子が住む家には歯ブラシ一本さえ置いていなかった。当然ネクタイも黒い靴下も、うちにあるわけがない。

私が帰宅した姿を確認後、夫はすぐに家を出て行った。一緒に食べようと思って買ってきたスイーツは、ひとりで淋しく一気に食べた。そしてすぐに全部トイレで吐いた。

でも今思えば、あの時夫から電話がかかっていなかったら、私は海に落ちていたんじゃないかと思う。理由は誰のせいでもない。

「ぐっすり眠りたい」

ただそれだけ。

レクタングル大(広告)